多分あまり世に知られていないマイナー漫画紹介の時間である。
「マイ・ブロークン・マリコ」一平庫ワカ(著)
この漫画はTVBrosコミックアワード2020大賞を受賞しており、このマンガがすごい!2021オンナ編第4位にランクインしている。
この漫画を読むきっかけは、2020年6月の雑誌「BRUTUS~マンガが好きで好きでたまらない~」でこの作品が紹介されていたからだ。
読んで思った、作者は間違いなく天才だ、と。
それでは紹介していく。
あらすじとか
上の絵の女性が抱えているものは何か。そう、遺骨である。
ある日、昼食のラーメンを食べていたシイノトモヨは偶然流れてきたテレビのニュースで、親友のイカガワマリコが自ら命を絶ったことを知る。マリコが子供の頃から父親の理不尽な暴力を受け続けてきたことを知っているシイノは、彼女の実家に単身乗り込み、マリコの遺骨を強奪!そして、かつてマリコが行きたいと言っていた、海辺の町を目指して旅に出るのだった・・
まとめると、唯一の親友を失った主人公が自分の気持ちにケリをつける物語です。
魅力的な主人公
物語はシイノの遺骨との旅と、時折描かれるマリコとの思い出でほぼ構成されている。
この物語を動かしていくのは、主人公のシイノの行動力である。
シイノの行動は理性や常識とは一切無縁で、自暴自棄、無軌道である。感情の赴くままに突っ走る。
包丁を持ってマリコの実家に乗り込み、遺骨を強奪し旅に出る。仕事を失おうが、怪我を負おうが関係ない。「友」との旅に比べれば、それ以外のことなど「どうでもいい」。
この漢気あふれる性格はとても魅力的に思えるし、読んでいて爽快感さえある(もちろん内容はシリアスであるが)。
似ているキャラクターは、GAINAXのアニメ「フリクリ」のハルハラ・ハル子かな。
綺麗なお姉さんが鼻ほじって唾吐いてタバコ吸って、メチャクチャ暴れるような(笑)
向き不向きはあるかも、でも俺は大好きな漫画
アマゾンのレビューを見てみると、評価が真っ二つに割れていて少し笑った。
好きな人は大絶賛しているが、分からない人はかなり酷評している。
扱っている題材が現実的かつシビアであるため、感性が合うかどうかで評価が分かれる作品だと思う。
自殺したマリコとの思い出のシーンは、マリコが暴力を受け、自身が壊れていく様が生々しく描写されており、胸糞悪くなる人もいるだろう。
けどそれ以上に、主人公の友人を想う気持ち、行動には心打たれるものがある。
また、絵はもちろん上手いし、物語のテンポが良く読みやすく、漫画をあまり読まない人でもスラスラ読める作品だ。
名言のオンパレード
名言が多すぎる。マジで。
「中学生だった実の娘を奴隷扱いしてやがったテメェに!弔われたって白々しくてヘドが出んだよォ!!」
「あんたはどうだったか知らないけどね、あたしには正直あんたしかいなかった」
「なんであたしを置いてった・・せめて一緒に死んでくれって何で言ってくれなかったんだ」
「そこであたしが飛び降りんのを!指ィくわえて見てなさいよ!ダチの自殺を止められねぇってのがどんな気持ちか、思い知るがいいわ!!」
・・すげぇ女だ、シイノトモヨは。
個人的に好きなシーン
自分が個人的に良いなと感じたシーンは、主人公が旅から自分のアパートへ帰ってきた場面である。
朝日の当たる親友の写真の横に一杯の水を置き、「・・くつろいでよ」と言う。何気ない日常のシーンだが、すげぇいいなと感じた。
親友の死。幸い自分はまだ経験したことはないが、同じ境遇になったら、自分も親友との思い出の場所に旅に出そうな気がする。そう思った。
漫画を読み終わったらぜひこの曲を聴いてほしい。雰囲気が合っており泣ける・・
そして何よりすごいのは、この作品が平庫ワカ先生のデビュー作であるという点だ。
また、先生は文化庁メディア芸術祭の新人賞も同作品で受賞している。
今後の活躍が非常に楽しみである。
現在「ComicWaker」で第1話が読めるので気になった方はどうぞ⇓